【八戸ROXX】蕪嶋神社再建支援CHARITY LIVE vol.5 2017.4.22 ライブレポート

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蕪嶋神社CHARITY LIVEは今回で5回目。

会場の八戸ROXXは、ロックを愛する地元の若者で賑わっていた。

 

2015年11月に蕪嶋神社が全焼した。

神社の再建支援を合い言葉に、このイベントは継続されている。

恥を承知で告白すると筆者は、火災の件は知っていたが、再建支援目的のイベントが企画されていることを全く知らなかった。

友人がライブに出演すると聞いて、たまたま足を運んだのがこのイベントだったというわけだ。

この企画を主催しているのはどんな人物なのか、どんな人達に支持されているのか非常に興味が湧き、胸が高まった。

 

会場に入って一番感じたことは、客層が若いということと、女性が多いということだ。

フレッシュな感じが期待感を増幅させた。

 

この日のアクトは全部で7バンド。

惇 -jun- / telescope / the Slumbers / THE BROWN MAD SUGARS / Disobrosis Corporation(from AKITA) / kamigakari / I'll Be Righthere

 

トップバッターを務めたのは、現役女子高生バンドの惇 -jun-。

Vo、Gt、Bs、Dr の4人組。

彼女達らしい柔らかさ且つ、芯の通った演奏で会場を湧かす。バンド活動への想いや、曲への想いを伝えるその姿は、とても女子高生とは思えない凛々しさ。堂々としたステージングだった。見事にトップバッターの大役を務め切った。

 

次に登場したtelescopeも、Vo/Gt、Gt、Bs、Dr の4ピースバンド。

andropのコピーとオリジナル曲を織り交ぜながら、その独特な世界観を表現。

オリジナルの曲の完成度はどれも高く、安定感抜群のリズム隊にのせて奏でる煌びやかなギターは思わず見とれる程だ。そんな曲をバックに歌い切るボーカルは、バンド始動から本格的にギターを始めたと言うのだから驚きだ。結成約1年だというのだから、そのステージングには舌を巻く。今後の伸び代が非常に楽しみなバンドだ。

 

3番手は結成3年目のthe Slumbers。

Vo/Bs から突如衝撃的な発言が飛び出した。4月29日のライブをもってthe Slumbersを解散するというのだ。

微妙な空気になってしまうのでは……と心配したのは取り越し苦労だったと思わされたのは、圧倒的なそのライブパフォーマンスを見たからだ。

Vo/Bs、Gt、Dr の3ピースバンドは、HUSKING BEEを思わせるパンクナンバーにのせて日本語歌詞を歌い上げる。

「何回やっても雰囲気に飲まれちゃうね」

というMCが印象的だったが、これだけのパフォーマンス力のあるバンドが解散をしてしまうのだから、残念でならない。復活の可能性を示唆していたから、その可能性に期待したい。

 

セッティングやリハーサルの時点で既に異様な雰囲気を醸し出していたのは、4番手のTHE BROWN MAD SUGARS。

ギターを手にする女性は、肩まで伸びる髪をセンターでホワイト&ブラックに染め分け、口にはマスクをしている。発色の良いオレンジのGretschのギターが余りにも強烈なインパクトを放っている。リハーサルの声出しでそのインパクトは更なるインパクトを与えた。アルコール焼けしたかのようなハスキーな声は、とても女性のそれとは思えない程だった。実は男だった。

ライブパフォーマンスは正に圧巻。Vo/Gt、Bs、Drの3人組。ボーカル以外は正真正銘の女性だ。

全員お揃いの黄色いジャケットを羽織り、顔にはPOLISYCSを彷彿とさせるサングラスをかける。

自然と体が動いてしまうような、アップテンポなロックンロールチューンを連発し、会場の雰囲気を一気に掴み、MADなワールドへ引き込んだ。

 

秋田県からDiabrosis Corporationが八戸に初上陸した。

近々、自主企画イベントを開催するだけあって、彼らのライブパフォーマンスでは会場の空気を一変させるだけの力をもっている。

超パワフルなリズム隊に乗せて、メタリックなツインギターのリフがが見事なアンサンブルを奏でる。

重厚かつ軽快な音に合わせて、その小さな体のどこからそんな声が出るんだという程にシャウトしまくるボーカルの存在感は抜群。観客の心を上手につかむMCも必見。

メンバーは終始満面の笑顔で、「楽しー!」と言っていたのが印象的だった。

 

 ドラマーが正式に加入し、新体制となったばかりのkamigakari。

Vo/Gt、Bs、Dr の3ピースパンクロックバンド。

数々の困難を乗り越えて、今日も、まるで当たり前のようにステージに立っているが、深い悲しみのその先に、強固なまでの覚悟をもってステージ立っていることを筆者は知る由もなかった。

泥臭くも鮮やかで、キャッチーなメロディのパンクロックナンバーの連続で、会場は一気に沸点に達した。

まるで何かに突き動かされているかの様な、ライブパフォーマンスは必見。ステージを所狭しと縦横無尽に飛び回るボーカル、燃え滾るようなスピリットを腹の底に押し込みながら、ベースの音で爆発させる。凶暴な2人を見事にまとめるドラムの存在感。

まさに神がかっていた。

 

今回のイベントの主催者である、I'll Be Righthere。

構成は、Vo、Gt、Bs、Bs、Drの5人組。珍しいツインベースのメロディックハードコアバンド。

お決まりのタンクトップで、見事な入れ墨をまといながらボーカルのTaneichiは言う「もうみんな興味なくなっちゃったのかな」と。

5回目を数えるこのイベントも、回を重ねるごとに客の入りが減少しているのだという。

客の減少への怒りなのか、見えない何かに怒りをぶつけているのか。どちらも否だ。

この想いを1人でも多くの人に届けたいと、自分自身を奮い立たせているのだろう。そんな想いがライブパフォーマンスに現れていると感じた。

客席に飛び込み、自らモッシュの中心となり、客の胸ぐらを掴み、シャウトしまくるその姿はまさに鬼だ。

 

バンド結成と蕪嶋神社全焼の奇縁

Taneichiはバンド活動が思うように運ばない時期があったと振り返る。Taneichiはハードコアやラウドロックをやりたかったが、当時は周りに理解してもらえず、バンドをやれるような仲間にも恵まれなかった。

そこで、活動拠点を津軽に移し、八戸から通いながらのバンド活動が始まった。そんな中、当時のバンドで八戸ROXXに出演する機会があった。

その打ち上げで、蕪嶋全焼のニュースを聞くことになる。

Taneichiは

「ずっとバンドやりたくて、何にもできなかった自分が何か出来るんじゃないか」

そんな熱い想いが胸に込み上げてきたのだと振り返る。

 

ちょうどそれを前後して、I'll Be Righthereは結成していた。

「どうせやるなら、自分がマイクを持つバンドでやりたいと思った」

 

そしてこの企画は動き出し、今回で5回目を数えるまでに至った。

 

「興味がないなら、興味もってくれるまでやるだけ」

 

「この企画に参加するだけで、再建に一歩近づく。

楽しさと募金を混ぜ合わせているところにこの企画は価値がある」

 

「堅苦しいことはなしにして、楽しんでもらえたら」

 

と、語るTaneichi自身がこの企画を最も楽しんでいる一人なのだろう。

 

再建への道はまだまだ遠い。

 

しかし、八戸にI'll Be Righthereのようなバンドがいる限り、再建は必ず成し遂げられると確信した。この企画に会えて本当に光栄であり、この企画を主催しているTaneichiに敬意を表したい。そして一人でも多くの方にこのイベントを知ってもらいたい。再建支援が目的でなくてもいい、友人のバンドを見るためだけでいい、とにかくこのイベントに足を運んでもらいたい。

そんなことを強く思わされた熱い熱い夜となった。